AI学習について
2024年11月15日よりXの利用規約が更新されることをきっかけに、かつてない混乱が起こっていますが、個人的な見解を少し。
TL上の言説ではなく一次情報を確認しましょう
まず最初に言いたいことはこれです。要するに、もし今後どうするべきか確実な判断材料が欲しいのであれば、まずは11月15日に施行されるXの利用規約とプライバシーポリシーの内容をちゃんと自分の目で確認しましょう。その上で自分の考えと意志で判断しましょう。
あの長い文章を読むのが億劫に感じてしまうのはわかります。「もう時間がないし自分が読んでもちゃんと理解できるかどうかわからない」という不安もあるかもしれません。しかし、もし今後もXを利用し続けるつもりなら、利用し続けることで自分が何に同意したことになるのかはちゃんと自分の目で確認しておくべきです。もしあなたが今後公式に迷惑をかけないか不安になっている二次創作者ならば尚更です。
私自身も自分の規約の解釈が完全に正しいという自信はありません。しかし、こういう時にちゃんと自分で一次情報を確認する習慣を身につけておかないと、他のSNSに行っても結局ずっと周囲の意見に過剰に振り回されることになりかねません。たとえ間違えても、自分の目で確認し、自分の意思で判断するということの方が大事だと私は思います。
私もこの記事を誰かの参考になればと思いながら書いてはいますが、この内容が絶対でも確実でもありませんので、あくまでも参考のひとつに留めておいてください。
私がAI学習に反対しない理由
たぶんXで繋がっている方々の中には「あいつも絵描きのくせに、なぜAI学習に反対しないんだ?🤨」と訝しんでいる方もいるのではないかと思います。
ただ率直に言うと、私はAI学習よりも「AI学習に反対しない奴は情弱で有害」みたいな空気が形成されつつある一部の絵師界隈の過激な空気感の方が今は恐ろしいです。
反対しない、というよりできる立場じゃない
なぜ私がAI学習に反対しないのかというと、AI学習される=必ず贋作が作られて悪用されるではないと考えているからです。
私自身、自分の画力を上げる目的でよくネット上の他人のイラストや写真等を見て研究したりしています。なのでもし仮に他の誰かが同じく画力を上げたいという目的で私の絵を研究したり参考にしたりしていても疎ましいとは思いません。例えそれがAIでも同様です。(正直他人の参考になるような画力にはまだまだ至っていないと思っていますが)
確かに特定の作品や絵柄を模倣する目的で生成AIを使用する人が存在するのは事実ですが、自分だけで楽しむ個人利用の範囲に留めるのであれば少なくともそれは違法ではありません。利益を上げることや著作者に嫌がらせをする目的で既存の著作物に競合する贋作を作ってそれを広める等の行為が伴って初めて違法性を問えます。
というか、そもそもその点を問題として突き詰めていくと、どう考えてもまず真っ先に非難されるのは、生成AIではなく二次創作をしている我々の方です。(公式が許可している、あるいは公式が定めたガイドラインに従って二次創作を行っている場合はまた話が別です)
法律や一般の人々から見れば、我々のしていることは生成AIのしていることとさほど違いはありません。そもそも他人の著作物にフリーライドする文化を広めた先駆者は生成AIではなく我々二次創作者だとも言えます。最近でも某バーガーチェーンのマスコットキャラのセンシティブな二次創作が公式タグをつけて拡散されるという暴挙が起こったばかりです。
「R-18イラストばっかり」「マクドナルドはもらい事故」 「いまだけダブチ」キャラ絵が、“性的な2次創作”の餌食に…それでもキャンペーンが失敗とは言えない理由(東洋経済オンライン) - Yahoo!ニュース
現時点においても特に対応行動をとっていない企業のX公式アカウントが存在するのも、要するにそういうことなのだと思います。「今までだって無許可で勝手に拝借してオモチャにする連中はごまんといたのに、なにを今更…🤷」って感じでドンと構えているのだと思います。ちゃんとした法務部が存在する大手企業なら、利用しているサービスの利用規約も当然把握しているでしょう。
はい、私も当事者のひとりです
そんなことを言っている私自身も、約三年前から二次創作活動を行っています。
最低限の節度と敬意と配慮をもってやってきたと言う自負はありますが、それでも何度か間違いを犯したかもしれませんし、著作者の許可なく作品の世界やキャラクターを勝手に使い、公式や原作で描かれていない物語を描き、それをネット上で共有している時点で私も完全にアウトです。
我々は公式様の温情で見逃されているだけです。愛があるとかリスペクトがあるだとかは関係ありません。むしろそれらを免罪符にするのは危険だとすら思っています。相手の意思を確認せず、一方的に愛を表明して相手に自分の行動を認めさせようとすれば、それはストーカーや毒親の所業となんら変わりません。愛と支配欲は紙一重であると言うことは、私が自分へ常に戒めてきたことでもあります。他人のものを許諾なく借りている以上、我々は決して驕るべきではないと考えています。
そんな立場の我々が規約や法律や技術を正しく理解するための努力を怠り、感情的な嫌悪感や見当違いな義憤に呑まれて生成AIを叩き続ければ、ほぼ間違いなくそれは回り回って自分たちの首を絞めることに繋がっていくでしょう。というか、もう既にそうなりつつあるように思えます。
配慮を欠けば危険というのは生成AIも二次創作もまったく同じです。だからこそ我々は慎重に行動しなければならないと思います。
今後どうなるのか
XによるAI学習は11月15日以降からではなく、すでに行われています。加えて今後もXを利用し続ける場合、ユーザーはXの利用規約に同意していると見做されるため、XによるAI学習は無断ではなくなります。「無断AI学習禁止」の印を付けた画像を投稿するのも、無意味どころかXの利用規約違反と見做される可能性があります。それによってペナルティが科されるかどうかまではわかりませんが…
※2025年11月16日追記
よくよく考えればXに画像を投稿している時点でXのAI学習に同意していることになるので、規約違反とは見做されないかもしれませんが、画像に「無断AI学習禁止」の印をつけてもXのAI学習を拒むことはできないのは確かです。(X以外のAIの学習を拒否するという意思表明としては意味があるかもしれません。)
ちなみに絵師界隈でXからの移住先の候補として薦められがちなBlueSkyは自社でのAI開発こそ行なっていませんが、外部からのクローラの制限などは行なっておらず、さらに外部からデータを収集するためのAPIも無料で提供されているため、AI学習のためのデータ収集はむしろXよりもしやすい環境と言えます。なので(AI学習対策が目的なら)個人的にはお薦めはしません
つまりXによるAI学習を許容しないのであれば、それはXの利用規約に同意しないということになるので、Xから撤退するしかありません。
それでも個人的にはXの規約に同意した上で利用を続ける法人の公式アカウントは結構いるのではないかと予想しています。公式アカウントが従来通り画像や動画を投稿するのか否か、それを確認した上で自身の今後の行動を検討しても遅くはないと思います。(無論、各企業がどのような対応し、そのどれを参考とするのかは各個人で判断しなければなりません)
最後に
自分の見解の要点をまとめると
- 生成AIは悪用が問題なのであって、学習そのものは問題ではない
- 「悪用の可能性がある以上、学習は許すべきじゃない」という理論でAI学習を規制しようとすれば、生成AIより二次創作の方が先に規制されかねない
というところです。
私自身はXやPixiv、そして自分のサイトは現状のまま、今後しばらくは様子を見る予定です。
ただ、今後Xに投稿するのはファンアートのイラストのみにする予定です。それ以外の二次創作の漫画などはPixivやここに投稿していこうかと考えています。
前述の通り、私は自身の描いた絵をAI学習されることは拒否しませんが、自分が投稿している絵が非公式の二次創作であると明らかにわかるような印は今後つけていこうかなとは考えています。
現時点では、私のイラストや漫画が生成AIに学習されることで公式様に迷惑がかかる可能性は限りなく低いと考えていますが、今後状況が変わればこのサイトにAIBot対策やパスワード機能を追加し、各SNSに投稿している二次創作をすべて削除することも考えています。
もしかしたら今後は二次創作をネット上で共有するという文化は廃れ、それ以前のオフラインのイベントに紙の媒体を持ち寄って創作を共有するという文化に戻っていくのかもしれませんね。
個人的にはそれで著作者の権利と利益がちゃんと守られるのであれば、却ってその方がいいんじゃないかとも思っています。